Yahoo!ニュースで西日本新聞の「『付いていけない』上がりすぎたマンション価格 4000万~7000万円で8割空室…住宅市場の減速鮮明」という記事が取り上げられていました。
確かに、最近は住宅価格が高止まりして「手が届きにくい」と感じる方も多いでしょう。しかし、この記事の内容には、首をかしげたくなる部分が多々ありました。今回は、記事の中身を整理しながら、福岡の住宅市場の実態を冷静に見ていきたいと思います。
記事の主張は「価格が上がり過ぎて売れなくなった」
まずは、Yahooニュースは見られなく可能性があるので、記事を引用しておきます。
最長50年「超長期」住宅ローンの利用増加
福岡県で住宅市場の減速が鮮明になってきた。地価や建築費の高騰でマンションや一戸建ての価格が急上昇し、「郊外でも手が出しにくい」(不動産関係者)状況になっている。販売不振から値下げに踏み切る物件が目立ち、返済期間が最長50年の「超長期」住宅ローンの利用も増えている。16日発表の基準地価では福岡県の上昇率が5年ぶりに縮小。地価上昇の勢いに陰りも出始めた。(井中恵仁、山下航)
中心部から離れた福岡市郊外。6月に完成した新築マンションはまだ8割が空室だ。ファミリータイプで価格は4千万~7千万円台。「価格が上がり過ぎて一般のファミリー層が付いて来られなくなっている。企業努力にも限界がある」。手がけたデベロッパーの関係者は表情を曇らせる。
好調だった県内の住宅販売に変調が見え始めたのは2024年ごろ。調査会社の住宅流通新報社(福岡市)によると、24年の分譲マンション販売戸数は前年より18%減少。25年はさらに落ち込み、上期(1~6月)は前年同期比23%減の1605戸で2年前より約千戸減った。
引き金は「高くなり過ぎた価格」
引き金は「高くなり過ぎた価格」(不動産鑑定士)だ。土地代や建築費が急ピッチで上がり、4千万円台で推移していた福岡市内の分譲マンション平均価格は24年に6千万円台へ急騰。25年上期は都心で供給が減って5千万円台に下がったが、同社の坂本康行編集部長は「市場の停滞傾向は深刻化しており、回復の兆しが見えない状態が続く」とみる。
一戸建てでは、3千万~4千万円が主流だった郊外で5千万円台の物件も登場。完成から1年以上も買い手が付かず、1千万円規模の値引きに踏み切るケースも出ている。不動産鑑定士の納富久雄さんは「郊外の割安感は薄れてきた。面積を小さくせざるを得ない」と話す。販売不振は地価に波及し、25年の基準地価では福岡都市圏の住宅地で上昇率が軒並み縮小。筑紫野市は8・0%から2・7%、古賀市は11・7%から4・2%に急落した。
「億ション」販売は引き続き好調
不動産価格の急騰は住宅ローン市場に変化をもたらしている。35年が標準だった返済期間は長期化傾向で、地方銀行やネット銀行は最長50年となる商品を相次いで投入している。
福岡銀行は21年2月に最長期間を35年から40年に変更し、23年末には50年まで延ばした。昨年は、「40年超~50年」を選ぶ利用者は約2割だったが、今年に入って約3割に増えている。
超長期ローンは月々の負担を減らせる一方で、返済総額が増加するデメリットもある。4年前に40年ローンで大野城市にマンションを購入した30代の男性会社員は「毎月の出費を減らすことを優先した」と話す。
富裕層や投資家向けの「億ション」の販売は引き続き好調で、都心の高値に引きずられ、住宅価格は「高止まりが続く」との見方が強い。賃金は上昇傾向にあるものの、不動産価格の急伸には追い付けていない。
九州の地銀幹部は「若い世代では、『住宅ローンは35年以内』との常識が変わりつつある。40年超のローンが主流になるのかもしれない」と話した。
西日本新聞
記事では、「福岡県で住宅市場の減速が鮮明になってきた」とまず断じて、郊外の完成した新築マンションが「8割空室」と紹介され、「価格が上がりすぎて一般のファミリー層が付いていけない」としています。また、分譲マンション販売戸数が前年比18%減、一戸建ても値下げが増えていると報じています。
確かに一部では販売が鈍っているのは事実です。しかし、記事の数字やエピソードはあくまで限定的なデータや個別事例に過ぎません。これだけで「福岡の住宅市場が冷え込んでいる」と結論づけるのは早計です。
“8割空室”は一部事例。福岡全体の傾向ではない
記事に出てくる「8割空室の新築マンション」は、郊外の1棟の話です。統計データではなく、単発取材の印象です。
実際には、福岡市中心部(薬院・西新・大濠・博多駅周辺など)では新築マンションの販売は依然として好調。抽選販売になる物件が多数あります。
販売不振が出ているのは、駅距離が遠いなど立地条件の悪い物件に限られます。これは全国の都市でも同じ傾向です。
ちなみに、私は福岡の新築マンション市場をウォッチしていますが、竣工して8割も空室の物件に心当たりがありません。本当に。。。どこの物件でしょうか?どなたかご存じの方いたら、教えてほしいです。
分譲マンション販売戸数が前年比18%減
記事では「住宅流通新報社(福岡市)によると、24年の分譲マンション販売戸数は前年より18%減少。25年はさらに落ち込み、上期(1~6月)は前年同期比23%減の1605戸で2年前より約千戸減った」とあります。
いや待ってほしい。これは販売戸数。ある意味供給戸数。供給戸数の増減は、マンションの売れ行きとはあまり関係がありません。今回の例で行けば、土地価格の上昇と建築資材の高騰で、供給できるエリアが限られたため(郊外にバカ高いマンションを建てられないので)、減少しているだけと考えられます。
実際問題、この程度の供給数減で済んでいるのが、奇跡的なくらいだと思います。
地価は「上昇率が鈍化」しているだけ、下落ではない
記事では「基準地価の上昇率が縮小」と書かれていますが、実際には依然として上昇しています。
たとえば筑紫野市で「8.0%→2.7%」とありましたが、これは“伸び率が緩やかになった”だけで、価格が下がったわけではありません。
全国的に見ても、福岡は人口増・企業進出・再開発が続く堅調な市場であり、“勢いの調整局面”に過ぎません。
「50年ローン」は悪い兆候ではなく、新しい選択肢
記事では「50年ローン利用が増加」として、市場の苦しさを強調しています。しかしこれは、金融商品の多様化と見るのが正確です。
- 共働き世帯の増加
- 団信(ローン保証)の拡充
- 長寿化によるライフプランの変化
などを背景に、返済期間を柔軟に設定する人が増えています。月々の負担を軽くし、後から繰り上げ返済するというスタイルも一般的です。欧米では50年ローンは珍しくなく、日本でも選択肢が広がったと考えるべきです。
もちろん、50年ローンにしないと物件価格に手が届かないというのも事実ですが。。。
福岡の住宅市場は「過熱からの調整」段階
最新の不動産レポート(不動産協会・信託銀行各社)では、「価格上昇の勢いは落ち着いたが、需要は底堅い」と分析されています。
つまり、
「バブル崩壊」ではなく、「一時的な過熱の修正」
というのが実態です。人口増が続く福岡では、長期的な住宅需要は依然として強く、“今後の新築供給が抑えられている”ことからも、価格が大きく下がる兆候は見られません。
まとめ:煽り見出しに惑わされず、データの中身を見る
Yahoo!ニュースの記事は、「郊外で8割空室」という強いフレーズを軸に、福岡の住宅市場全体を“減速している”と見せています。しかし、実際には部分的な停滞に過ぎず、全体としては堅調な市場です。
こういう記事は、本当にやめてほしいですね!
住宅市場の記事を読むときは、
- 「そのデータは、どういうものか?」
- 「記事の根拠は、なにか?」
- 「上昇率が下がったのか、価格が下がったのか?」
といった視点で読むと、より正確に判断できます。
とはいえ、普段住宅関連のデータに慣れてないとわかりにくいですよね。。。
まとめ
「福岡の住宅市場は、堅調に推移しつつ、“冷静な落ち着き”を取り戻している段階です。」

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