
福岡から車でおよそ1時間半。御船山楽園の一角に、わずか11室だけの宿があります。「御宿 竹林亭」。派手さはありませんが、一度足を運んだ方の多くが「また戻りたい」と口にする宿です。
今回はこの竹林亭を通じて、福岡から日帰りでも一泊でも訪ねられる「心地良い空間」の魅力をお伝えします。
福岡から、静けさの山懐へ
電車の場合 博多駅から佐世保線特急でおよそ1時間、武雄温泉駅からタクシーで5分ほどです。事前連絡をすれば、駅と宿を結ぶ送迎バスも利用できます。
車の場合 福岡市内から高速道路を使い、おおよそ1時間半が目安です。今回は午前中に仕事を済ませ、昼食後に出発して14時に到着というスケジュールで訪れました。チェックインまでの30分は、隣接する御船山楽園の散策にあてられるほど、余裕を持って行き来できる距離です。
ルートは九州自動車道経由と佐賀唐津道路経由の2通りがあり、所要時間はほぼ同じですが、高速料金には差があります(唐津道路の方が安め)。ただし唐津道路には途中の休憩場所がほとんどないため、長距離運転に慣れていない同行者がいる場合は考慮しておくとよさそうです。
日帰りでも往来できる距離にありながら、到着した瞬間に日常から切り離された空気が広がっています。福岡での暮らしを考える方にとっても、「平日の午後、その日のうちに山懐の静けさへ辿り着ける」という距離感は、暮らしの質を測る一つの指標になるはずです。
庭屋一如(ていおくいちにょ)という思想
竹林亭が建つのは、1845年に開園した「御船山楽園」の敷地内です。春には御船山の断崖を背に、庭園一面がツツジで埋め尽くされ、九州でも指折りの花の名所として知られています。約15万坪の庭園の中に、客室はわずか11室。宿が掲げるのは「庭屋一如」という言葉で、庭と建物、四季、周辺の環境を一体として捉え、その調和の中に空間をつくるという思想です。

11の客室はそれぞれ異なる間取りで設えられており、すべての客室に展望露天風呂または露天風呂が備わっています。



竹林亭ならではの特徴は、専用通路を使っていつでも御船山楽園に入れること、そして隣接する御船山楽園ホテルの大浴場「らかんの湯」を宿泊者が自由に利用できることです。「らかんの湯」はサウナシュランで2019年から3年連続グランプリを獲得した施設で、ドライサウナ・薬用ミストサウナ・薪サウナの3種を備え、九州のサウナ愛好家の間では知られた存在です。
この宿は2014年、ミシュランガイド福岡・佐賀の特別版で最高評価「5レッドパビリオン」を獲得しており、皇族の来訪先としても選ばれてきました。
編集長が見た竹林亭
もっとも心地よかったのは、部屋の展望露天風呂から眺める御船山楽園の木々と山でした。湯に浸かりながら視界いっぱいに緑と山肌が広がる、この宿ならではの時間です。
御船山楽園内の古民家「萩野尾御茶屋」は、夜になると宿泊者向けのBARに姿を変えます。池のほとりという庭園の一部にそのまま溶け込んだ空間で、ライトアップされた水面を眺めながら過ごす時間は、この庭がなければ成立しない体験でした。



大浴場は、部屋に露天風呂があることもあってか、訪れるといつも空いていて、それはそれで気持ちが良いものでした。
静けさそのものを味わいたい方、部屋にいながら庭園の景色を独り占めしたい方に薦めたい宿です。
おわりに
福岡から1時間半。それだけの距離で、部屋の展望露天風呂から御船山楽園の緑と山を望む、日常から切り離された時間に出会えます。九州にも、東京の方が思う以上に洗練された空間文化があります。