マンションの大規模修繕は「適正」にできるのか?談合事件から考える、管理組合の自衛策

マンションの大規模修繕工事をめぐる談合事件が、いま大きなニュースになっています。しかも今回は、施工会社だけでなく「住民の味方」であるはずの設計コンサルタントまで関わっていたことが分かりました。

正直なところ、私自身も「工事費が適正かどうかなんて、素人には判断できない」ので「頼りにしたコンサルが不正をしていたら、もう打つ手がない」と感じています。同じように不安を持った方も多いのではないでしょうか。

この記事では、まず事件のポイントを整理したうえで、「じゃあ、どうすれば適正な修繕ができるのか?」を考えてみたいと思います。

事件のポイントをざっくり整理

日本経済新聞(2026年10月19日)の報道をもとに、要点をまとめるとこんな内容です。

・公正取引委員会は2026年9月、関東で行われたマンション修繕工事171件で談合があったと認定し、施工会社36社と設計コンサルタント2社に排除措置命令を出した
・管理組合から依頼を受けて施工会社選びを支援するはずのコンサルが、受注調整に関わり、施工会社から工事費の5%程度のバックマージンを受け取っていた
・公取委は7月、東海3県の大規模修繕工事でも談合の疑いがあるとして立ち入り検査を始めており、全国的な問題の可能性もある
・施工会社の社員が住民になりすまして管理組合に入り込むケースも報告されている
・被害を受けた管理組合の人たちが、不正の手口や兆候を紹介する情報サイトを立ち上げるなど、住民側の自衛の動きが出てきた
・国土交通省は10月19日に有識者会議の初会合を開き、2027年3月をめどに再発防止策をまとめる方針

背景には、修繕費そのものの上昇もあります。記事によると、経済調査会の調べでは2026年の1戸あたりの平均負担額は約156万円で、2013年と比べて7割近く増えています。費用が膨らむなかで、談合によって価格がさらに吊り上げられていたとすれば、住民にとってはたまったものではありませんよね。

なぜ「打つ手なし」と感じてしまうのか

この問題の根っこにあるのは、発注する側(管理組合)と受注する側(施工会社)の圧倒的な情報格差だと思います。

管理組合の理事は、ほとんどが建築の素人です。しかも輪番制で1〜2年ごとに入れ替わることも多く、十数年に一度の大規模修繕の経験が組合内に蓄積されにくい。だからこそ専門家であるコンサルに頼るわけですが、その「頼る先」が不正をしていたら、素人には見抜きようがありません。

記事に登場する被害者の方も、コンサルの資料はきれいで説明も丁寧で、ほとんど誰も疑っていなかったと振り返っています。「大手のほうが安心」という空気で選んだ結果だった、という話は、どこのマンションでも起こり得ることだと感じます。

ここからは、この「打つ手なし」の状況に対して、考えられる対策を3つの方向から整理してみます。

対策①:コンサルの不正に、もっと重い責任を

まず考えたいのは、制度面での抑止力です。

実は談合(不当な取引制限)自体は、独占禁止法上、刑事罰の対象にもなり得る行為です。ただ、実際に刑事告発まで進むケースは限られていて、今回も行政処分(排除措置命令)という形でした。また、住民側が損害賠償を求めようとしても、談合によって損害が出たことを住民側で立証しなければならず、ハードルは高いのが現状です。

記事の解説では、本来は住民側に立つべきコンサルが施工会社からキックバックを受け取るのは、独占禁止法違反にとどまらず、背任にあたる可能性があるという専門家の指摘もありました。

個人的には、次のような仕組みがあってもいいのではと考えています。

・コンサル業務の登録制や、不正があった場合の業務停止・資格停止
・施工会社からのバックマージン受け取りの明確な禁止と、違反時の罰則
・コンサルと施工会社の利害関係(過去の取引・資本関係など)の開示義務
・談合が認定された場合に違約金を支払う特約(国交省も推奨)の標準化

「悪いことをしたら割に合わない」状態をつくることが、いちばん確実な抑止になるのではないでしょうか。国の有識者会議でどこまで踏み込んだ議論がされるのか、注目したいところです。

対策②:セカンドオピニオンを取れる仕組みを使う

制度が整うのを待っているだけでは、目の前の修繕は守れません。管理組合として今すぐできることとして、「セカンドオピニオン」の活用があります。

意外と知られていないのですが、公的な相談窓口もあります。

・(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」では、建築士などの相談員に相談でき、見積書のチェックを無料で受けられるサービスもある
・(公財)マンション管理センターでは、建物・設備の維持管理に関する相談を受け付けている

このほか、管理組合独自にできる工夫としては、次のようなものが挙げられます。

・メインのコンサルとは別に、利害関係のない建築士やマンション管理士に「設計内容と見積もりのチェックだけ」をスポットで依頼する
・見積もりは金額だけでなく、内訳や数量まで複数社で比較する
・コンサルが推薦した施工会社以外にも、管理組合独自のルートで候補を探す
・コンサルに「施工会社からバックマージンを受け取らない」ことを書面で約束してもらう
・業者との打ち合わせは録音して保管しておく

一つのコンサルに「全部おまかせ」にしないこと。これだけでも、不正が入り込む余地はかなり小さくなりそうです。

対策③:そもそも、その工事は本当に必要か?

そしてもう一つ、見落とされがちなのが「工事の中身そのもの」を問い直す視点です。

大規模修繕は「12年ごとにやるもの」というイメージが強いですよね。ただ、国交省の長期修繕計画作成ガイドラインでは、2021年の改訂で大規模修繕の周期の目安が「12年程度」から「12〜15年程度」に見直されています。さらに、部材や工事仕様、技術の進歩によって適切な周期は変わり得るとも明記されています。

つまり、「12年経ったから一斉に全部やる」が絶対の正解というわけではないんです。

実際には、劣化診断の結果を見ながら、次のように工事を仕分けしていく考え方があってもいいと思います。

・今やらないと安全や建物の寿命に関わる工事(外壁の浮き・剥落対策、屋上防水の劣化など)
・状態を見ながら先送りも検討できる工事
・「せっかくだから」と追加されたグレードアップ工事

一方で、注意も必要です。外壁タイルの剥落や雨漏りなどは、放置すると事故や大きな補修費につながります。「やらなくても大丈夫そう」という感覚だけで先送りすると、結果的に高くつくこともあり得ます。

大事なのは、「やる・やらない」をコンサルや施工会社の提案だけで決めず、劣化診断の結果を根拠に、住民が納得したうえで決めること。ここでもセカンドオピニオンが役に立ちます。「この工事は今回必要ですか?」と第三者に聞いてみるだけでも、オーバースペックな工事に気づけるかもしれません。

これからマンションを買う人にも関係のある話

福岡住まいWEBをご覧の方の多くは、これから新築マンションの購入を考えている方だと思います。「大規模修繕は10年以上先の話」と思いがちですが、実はそうでもありません。

購入時には、管理費や修繕積立金の金額だけでなく、長期修繕計画がどうなっているか、修繕積立金が将来どれくらい上がる計画なのかも、ぜひ確認しておきたいポイントです。

購入前にチェックしたい「長期修繕計画」と「修繕積立金」

新築マンションでは、売主側が分譲時に「長期修繕計画案」を作成しています。ただ、パンフレットにはまず載っていないので、モデルルームで営業担当の方に「長期修繕計画案と、修繕積立金の推移表を見せてください」と頼んでみるのが確実です。修繕積立金の初期額や、入居時に払う修繕積立基金の額は、重要事項説明書や管理規約案でも確認できます。

資料を見せてもらったら、次のポイントをチェックしてみてください。

・計画期間が30年以上あり、大規模修繕が2回以上含まれているか
・積立方式は「均等積立方式」か「段階増額積立方式」か
・何年目にいくら上がり、最終的に月いくらになる計画か
・修繕のたびに一時金を集める、借り入れをするといった前提になっていないか
・機械式駐車場がある場合、その更新費用が計画に入っているか

最近の新築では、最初は積立金を低めに設定し、数年ごとに上げていく「段階増額積立方式」が主流です。月々の積立金が安く見えても、それは将来の値上げが前提の金額だと考えておいたほうがよさそうです。

ここでいちばん見てほしいのが「最終的にどこまで上がるか」です。国土交通省は2024年6月にガイドラインを改定し、段階増額方式の場合は、均等に積み立てた場合の金額を基準として、初期額は基準額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内に収めるのが適切という考え方を示しました。

少しややこしいですが、ざっくり言うと「最終額が当初額のおよそ1.8倍を超える計画は、国の考え方から外れている可能性が高い」というのが一つの目安になります。たとえば月1万円スタートで最終的に月3万円になる計画なら、少し注意して見ておきたいところです。

なぜここまで気にするかというと、「値上げする予定」が「実際に値上げできる」とは限らないからです。値上げ幅が大きいと管理組合の総会で合意が得られず、積立金が足りなくなるケースもあります。そうなると、必要な工事を削るか、一時金を集めるかという話になってしまいます。

そして入居後は、管理組合の活動に少しでも関心を持っておくこと。記事でも、管理組合に無関心な所有者が多いほど不正を呼び込みやすいという弁護士の指摘がありました。自分たちのお金を守るのは、最終的には自分たち、ということなのかもしれません。

まとめ

今回の談合事件は、「専門家に任せておけば安心」という前提が崩れたという意味で、多くのマンション住民にとってショックの大きいニュースだったと思います。

ただ、打つ手がまったくないわけではありません。制度面では、コンサルの不正に対する罰則強化や利害関係の開示といった仕組みづくりが求められます。管理組合としては、無料の公的窓口や第三者の専門家を使ったセカンドオピニオン、そして「その工事は本当に今必要か」を問い直す姿勢が、いちばん現実的な自衛策になりそうです。

国の有識者会議は2027年3月に結論をまとめる予定です。福岡住まいWEBでも、今後の動きを引き続きウォッチしていきたいと思います。あなたのマンションの修繕計画も、一度じっくり見直してみてはいかがですか。

福岡住まいWEBでは、福岡の新築分譲マンションをAIレポートで分かりやすく紹介しています。物件選びの参考に、ぜひあわせてご覧ください。

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