
セレンデVOL.48(2026年10月号)の特集はロサンゼルス。
表紙は、ダウンタウンLAの一角。
白い網目模様の美術館「ザ・ブロード」、その奥に見えるのはウォルト・ディズニー・コンサートホールになります。
ロサンゼルスの名作住宅から現代建築まで、実際に歩いて撮影・取材してきました。
本記事は、セレンデ紙面の内容をWEBでご紹介するものです。
情報は2026年10月のものになります。
編集記事の全文を掲載。デザイン優先で、小さいフォントで掲載しています。
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※掲載内容は発行時点(2026年10月)の情報です
LAの名作住宅を巡る

ロサンゼルスという街を語るうえで、外せないのが名作住宅の存在です。20世紀を代表する建築家たちが、こぞってこの街で実験的な住宅を手がけてきました。今回、真っ先に見学を希望したのが、ピエール・コーニッグ設計の「スタール・ハウス(Case Study House #22)」。ハリウッドの夜景を望むガラス張りのリビングは、あまりに有名な一枚の写真で世界中に知られています。しかし、見学ツアーは早々に完売。次の機会に持ち越しとなりました。その代わりというわけではありませんが、今回は事前予約制の「イームズハウス」「ホリーホックハウス」「シンドラー住宅」の3邸を見学。加えて、「John Sowden House」「エニスハウス」は外観のみ見て回りました。LAの名作住宅は、多くが今も個人所有や財団の管理下にあり、内部見学には事前予約や時間指定が必須です。訪れる際は公式サイトでの確認をおすすめします。
イームズハウス(Case Study House #8)
1949年、チャールズ&レイ・イームズ夫妻が自邸として建てたこの家は、「ケース・スタディ・ハウス・プログラム*」の代表作のひとつです。戦後の物資不足のなか、規格化された工業用鋼材とガラスパネルを組み合わせ、わずか数日で骨組みを組み上げたと言われています。
ユーカリの木立に囲まれた敷地に、スチールフレームとガラス面だけで構成された箱型の建物が佇む姿は、質素でありながらどこか凛としています。
内部は吹き抜けのリビングを中心に、赤や青の原色を効かせた家具や装飾品が並び、夫妻の遊び心が随所に感じられました。住宅でありながら、同時に2人の仕事場(スタジオ)としても機能していたという点も、この家の大きな特徴です。
*ケース・スタディ・ハウス・プログラム(Case Study House Program)は、戦後のアメリカで「これからの住宅はどうあるべきか」を実際に家を建てながら実験した住宅プロジェクトです。特徴的なのは、単なる設計コンペではなく、実際に建設して一般公開したことです。鉄骨、ガラス、プレハブ部材など当時としては新しい素材や工法を積極的に使い、住宅の工業化・合理化を試しました。
ホリーホックハウスとシンドラー住宅

続いてご紹介するのは、フランク・ロイド・ライト設計の「ホリーホックハウス」と、彼の弟子であったR.M.シンドラーによる「シンドラー住宅」です。
ホリーホックハウス
1921年、バーンズドール・アート・パークの丘に完成したこの邸宅は、施主アライン・バーンズドールが愛した花「タチアオイ(ホリーホック)」の意匠を、外壁や柱、家具にまで繰り返し取り入れているのが名前の由来です。マヤ文明の神殿を思わせる重厚な外観は、正直なところ、私自身の好みからすると少し重たく、第一印象で強く心を惹かれるタイプの建築ではありませんでした。ただ、実際に中へ足を踏み入れると、印象は一変します。中庭を囲むように部屋が配置され、室内と屋外が緩やかにつながっていく構成、低く抑えられた天井から一転して視界が開ける居間など、随所に「間(ま)」を大切にする日本建築的な思想を感じました。ライトは日本の建築や浮世絵から強く影響を受けていたことで知られますが、その哲学がこの住宅にも色濃く息づいています。外観の第一印象だけで判断せず、ぜひ中まで見てほしい一邸です。
シンドラー住宅
1922年、シンドラーが自邸として建てたこの住宅は、コンクリートパネルと木造フレームを組み合わせた独自の構法「スラブ・ティルト・アップ」を採用。壁の大部分をガラスの引き戸とし、室内と屋外のパティオが一体化するように設計されています。
もともとは2家族が共同生活を送るための住宅として計画されており、それぞれの家族に専用の屋外スペースが与えられているのも特徴です。ホリーホックハウスとは対照的に、装飾を削ぎ落としたミニマルな佇まいで、モダニズム建築の原点を見るような感覚がありました。
ダウンタウンの現代建築2選

LAダウンタウンには、現代建築を代表する2つの建物が通りに並ぶように建っています。
ウォルト・ディズニー・コンサートホール
設計はフランク・ゲーリー。2003年開館。銀色に輝く巨大な帆のような外観が特徴で、逆光に透ける面もあれば、鈍く光を弾く面もあり、見る角度と時間帯によって表情がまったく異なります。この形状は、ゲーリー自身が趣味とするセーリング(帆走)から着想を得たと言われています。両側に帆を張って風を受けた状態の美しさを、そのまま建物の外観に投影したそうです。これほど不規則な曲面を、なぜ均一な精度で施工できたのか。答えは航空機設計用ソフト「CATIA」にあります。ゲーリー事務所はこのソフトを建築用に転用し、現場に正確な施工情報として渡しました。施工を担ったのはアメリカの総合建設会社、M.A. Mortenson Companyです。また、この建物には福岡とのつながりがあります。ステンレス外壁の特殊研磨仕上げ――光を柔らかく拡散させ、帆が波間にきらめくような表情を出す加工――を手がけたのは、太宰府市に本社を置く東洋ステンレス研磨工業株式会社です。世界的建築の「顔」とも言える質感を、福岡の技術が支えていたことになります。
屋上庭園やロビーの様子など、誌面に載せきれなかった写真はWeb版でご紹介しています。
→[ウォルト・ディズニー・コンサートホール(ロサンゼルス)|世界の建築を旅する]
ザ・ブロード
現代アート美術館「ザ・ブロード」。設計はディラー・スコフィディオ+レンフロ。「ヴェール(覆い)とヴォールト(保管庫)」という2つの要素からなる構成が特徴で、ハニカム状に無数の穴が空いた白い外皮(ヴェール)が建物全体を包み込み、その内側に美術品を収蔵するヴォールトが埋め込まれています。
この穴の開いた外皮は、内部に柔らかい自然光を取り込みながら紫外線をカットする機能も兼ねており、意匠と機能が両立した設計です。エントランスをくぐると、まず目に飛び込んでくるのが、白いトンネル状のエスカレーターです。まるで洞窟の内部を通り抜けるような感覚で、ヴォールトの中を通って2階のギャラリーへと運ばれていきます。この演出こそが、ザ・ブロードの体験の核と言っていいかもしれません。館内には、ジェフ・クーンズの巨大なバルーン・ドッグや、草間彌生など、SNSで見たことのある作品が惜しみなく並びます。それでいて入館料は無料(一部の企画展は有料)。これだけの現代アートのコレクションを気軽に鑑賞できるのは、ロサンゼルスという街の懐の深さを感じさせます。
LAのその他の現代建築と名作住宅

最後に、今回見て回ったその他の建築をダイジェストでご紹介します。いずれも、外観と内部でまったく違う顔を見せる建物ばかりで、ロサンゼルスの建築の奥深さを改めて感じさせてくれました。
ピーターセン自動車博物館
赤とシルバーのリボンが建物全体を包み込むような、有機的な曲線が印象的な外観です。設計はKPF。もともとは四角い箱型の建物だったところに、後年このリボン状のファサードを増築したというのも興味深い点です。館内には、クラシックカーからハリウッド映画に登場した名車まで幅広く展示されており、車好きでなくても十分楽しめる内容でした。
アカデミー・ミュージアム・オブ・モーション・ピクチャーズ
設計はレンゾ・ピアノ。既存の歴史的建造物「サバン・ビルディング」を保存・改修しつつ、隣接する敷地に球体状の新館を増築するという、保存と創造を両立させた設計手法が特徴です。この球体シアターの上部には展望テラスがあり、ハリウッドの街並みを一望できます。映画の歴史そのものをテーマにした博物館だけあって、建物自体も「映画の殿堂」にふさわしい存在感を放っていました。
LACMA「アーバン・ライト」
ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)の正面広場に設置された、クリス・バーデンによるパブリックアート作品です。1920年代から30年代にかけて実際に街灯として使われていた、202本のヴィンテージストリートランプを規則正しく並べたインスタレーションで、昼は光を受けて白く輝き、夜はすべての灯りが点灯します。今やLACMAの顔として定着しており、多くの観光客が記念撮影をする人気スポットになっています。
John Sowden House
フランク・ロイド・ライトの息子、ロイド・ライトによる設計。マヤ文明の神殿を思わせる、ぎざぎざとした装飾の正面ファサードが強烈な印象を残す一邸です。父フランクの「テキスタイル・ブロック工法」の影響を受けつつ、より劇場的で舞台装置のような外観に仕上げているのが特徴で、実際にハリウッドのパーティー会場として使われていた時期もあったそうです。
エニスハウス
フランク・ロイド・ライトが1924年に手がけた住宅で、コンクリートブロックを積み上げる「テキスタイル・ブロック工法」を採用した代表作です。ブロック一つひとつに幾何学模様の型を施し、それを積み重ねることで壁全体に立体的な装飾を生み出しています。
ブラッドベリ・ビルディング
1893年築のオフィスビル。外観は落ち着いた石造りで一見地味な印象ですが、中に足を踏み入れると一変します。吹き抜けの中庭を、鋳鉄製の装飾階段と手すり、そしてガラス屋根から差し込む自然光が包み込み、19世紀末とは思えないほどドラマチックな空間が広がっていました。映画『ブレードランナー』の舞台として知られ、今なお現役のオフィスビルとして使われています。
こうした「外観からは想像できない内部」を持つ建築が、ダウンタウンには数多く残っています。派手な超高層ビルが立ち並ぶ一方で、100年以上前の建物を取り壊さずに個性そのものを都市の資産として残し続けているところに、ロサンゼルスという街の建築文化の奥深さを感じました。
セレンデ プレミアムレポート
今回掲載の4物件は、福岡住まいWEBの「福岡プレミアムレジデンス」のページで確認できます。
1DAY TRIP&編集後記

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※掲載内容は発行時点(2026年10月)の情報です
ザ・リッツ・カールトン福岡
今回の1DAY TRIPは遠出をせず、地元・福岡の「ザ・リッツ・カールトン福岡」にクラブラウンジ付きのプランで一泊してきました。ホテルから一歩も出ずに過ごす休日が、どんなものだったのか。
誌面では紹介しきれなかった客室やラウンジの写真、5回のフードプレゼンテーションの中身は、Web版で詳しくご紹介しています。
→[ザ・リッツ・カールトン福岡|心地良い空間を訪ねて]



